「今年も気づけば、あと数日…」
カレンダーを見て、そんな焦りを感じていませんか?
「今年の目標、結局どれくらい達成できたっけ?」
「毎日忙しかったけど、何が進んだのか思い出せない」
多くの人は、なんとなく紅白を見て、年越しそばを食べて、「来年こそは頑張ろう」と漠然と誓って新年を迎えてしまいます。
しかし、断言します。「振り返り」のない人間に、成長はありません。
特に、誰からも評価されないフリーランスにとって、年末年始は唯一立ち止まって「自分株式会社」の経営会議を行えるゴールデンタイムです。
僕は2015年から毎年(2023年を除いて)欠かさず、年末に一人で「年間振り返り」を行っています。
調子が良かった年も、売上が落ちて苦しかった年も、全てをノートに記録してきました。
この記事では、僕が10年近く実践している「反省会」ではなく「戦略会議」としての年次レビューのやり方を解説します。
難しいフレームワークは使いません。必要なのは、お気に入りのノートとペン、そして数時間の「一人になれる時間」だけです。
なぜ、年末に「1年の振り返り」をすべきなのか?
「過ぎたことを考えても仕方ない」「そんな暇があったら仕事をしたい」
そう思うかもしれません。ですが、振り返りは単なる「思い出作り」ではありません。来年のあなたの年収と自由な時間を守るための、必須の業務です。
振り返りを「する人」と「しない人」では、1年後にこれだけの差がつきます。
| 項目 | 振り返りを「しない人」 | 振り返りを「する人」 |
|---|---|---|
| 経験の扱い | 点(やりっぱなし) | 線(資産として積み上がる) |
| 成長速度 | 同じ失敗を来年も繰り返す | 失敗を教訓にし、進化する |
| 年明けの状態 | 「また仕事か…」と憂鬱 | 「よし、やるぞ!」とワクワク |
| 1年後の成果 | 現状維持か、ジリ貧 | 年収も自由も右肩上がり |
目的は大きく3つあります。
1. 「感覚」と「事実」のズレを正し、現在地を知るため
人間の記憶や感覚は、驚くほどいい加減です。
「今年はすごく忙しかった気がする」と思っていても、数字を見てみたら実はそうでもなかった…なんてことはザラにあります。この「感覚と事実のズレ」を正さない限り、来年も同じような時間の使い方をしてしまいます。
僕の実体験をお話しします。
ある年の振り返りで、稼働時間が前年より「約100時間」減っていることに気づきました。「100時間」と聞くと大きく感じますが、これを365日で割ると、1日あたりたったの「16分」です。
毎日、無意識に見ていたSNS。なんとなく着手が遅れた16分。このわずかな「チリ」が、1年積もると「山(100時間=約半月分の労働時間)」になっていたのです。
この衝撃的な事実は、数字で振り返らない限り、永遠に気づけなかったでしょう。自分の現在地を正確に知るために、振り返りは必要なのです。
2. 失敗を「データ」に変えて資産化するため
2024年、僕は正直に言って「不調」な1年でした。
クライアントとの契約変更があり、報酬が減り、そこからのリカバリーも遅れました。精神的に落ち込み、現実逃避してTikTokやゲームに時間を溶かすこともありました。
でも、この「失敗」をただの「嫌な思い出」として蓋をしてしまえば、来年も同じ失敗を繰り返すだけです。
- なぜ、契約変更になったのか?(外部要因か、自分のスキル不足か?)
- なぜ、リカバリーできなかったのか?(危機感の欠如か、メンタルの弱さか?)
これらを言語化してノートに残した瞬間、失敗は「経験データ」に変わり、来年の自分を助ける「資産」になります。
振り返りをしない人は、経験が「点」のままです。振り返りをする人は、経験を「線」に繋げることができます。この差が、3年後、5年後に圧倒的な「実力差」となって現れるのです。
3. 自己肯定感を満タンにして新年を迎えるため
人間の脳は、本能的に「ネガティブなこと」を強く記憶するようにできています。
放っておくと、「今年はあれもできなかった、これも終わらなかった」という後悔ばかりが頭に浮かびます。
だからこそ、あえて「できたこと」を掘り起こす作業が必要です。
- 新しい案件を受注できた。
- ブログを〇記事更新した。
- 大きな病気をせず健康に過ごせた。
どんなに小さなことでも構いません。「自分、意外と頑張ったじゃん」と認めてあげること。
この「自信の貯金」こそが、来年また新しいことに挑戦するためのガソリンになります。
[内部リンク:週次振り返りのやり方|反省は不要。日曜30分で「戦略」を立てる技術]
準備するもの:必要なのは「一人になれる時間」だけ
特別なツールは必要ありません。
ただ、環境だけはこだわってください。自宅には「日常(家事やテレビ)」というノイズが多すぎます。
- 場所: お気に入りのカフェ、ホテルのラウンジ、海が見える公園など。(日常から離れることが重要)
- 時間: 最低2時間。スマホの通知は必ずオフにする。
- ツール:
- お気に入りのノートとペン(手書きがおすすめ)
- スケジュール帳(カレンダー) or Obsidianなどのログ
- スマホの写真フォルダ(記憶の宝庫です)
「自分のためだけに、贅沢な時間と空間を用意する」。これだけで、振り返りの質は半分決まったようなものです。
【実践編】1年を総決算する「年次レビュー」3ステップ
難しいフレームワークは使いません。基本は「事実を見る → 感情を見る → KPT」という3ステップです。
ノートの見開きページを使って、左側に「事実と感情」、右側に「KPT」を書くイメージで進めてください。
Step1【事実】カレンダーと写真を見返す
人間の記憶は当てになりません。「今年は何もなかった」と思っていても、ログを見返せば必ず何かがあります。
まずは感情を挟まず、淡々と「事実」を時系列で書き出します。
■ 1. ログを掘り起こす
以下の3つを手元に用意し、1月から順に眺めていきます。
- カレンダー(Googleカレンダーなど): アポ、納期、旅行の記録
- カメラロール(スマホ): 食べたもの、行った場所、買ったもの
- 決済履歴(マネーフォワードなど): 大きな買い物、自己投資
■ 2. 4つの観点で書き出す
ただ眺めるだけでなく、以下の4つの観点で「トピックス」を書き出してみてください。
- 仕事(Work): 新規案件、契約終了、売上の増減、新しいスキル
- 健康(Health): 体調不良、運動習慣、睡眠、体重の変化
- 人間関係(Relation): 新しい出会い、疎遠になった人、家族とのイベント
- 遊び・学び(Play): 旅行、読んだ本、ハマった趣味、買ったガジェット
【書き出し例】
1月: torifの運用を再開。〇〇案件を受注。(仕事)
2月: AIを本格的に業務に組み込むことを開始。(仕事/学び)
4月: 家族で〇〇へ旅行。(遊び)
8月: クライアントAとの契約終了(売上減)。(仕事)
10月: Obsidian × Cursorを開始→生産性爆上がり。(仕事/学び)
11月: 趣味のゴルフで90切りを達成。(遊び)
Step2【感情】「ワクワク」と「モヤモヤ」を抽出する
事実が出揃ったら、そこに色ペンで「感情タグ」をつけていきます。
出来事そのものよりも、「その時、自分の心がどう動いたか?」が重要です。
■ ワクワク(Good)=赤ペン
- 夢中になって時間を忘れた仕事は?
- 「これ、一生やってたいな」と思った瞬間は?
- ガッツポーズした瞬間は?
- → これが来年の「伸ばす種(強み)」です。
■ モヤモヤ(Bad)=青ペン
- 朝、起きるのが辛かった日はいつ?
- 「二度とやりたくない」と思った仕事は?
- 嫉妬や自己嫌悪を感じた瞬間は?
- → これが来年の「捨てる種(ノイズ)」です。
特に「モヤモヤ」は宝の山です。
「なぜモヤモヤしたのか?」を突き詰めてください。「単価が安かったから」なのか、「クライアントと馬が合わなかったから」なのか、「単純作業が苦痛だったから」なのか。
解像度を上げることで、来年「やらないことリスト」の精度が上がります。
[内部リンク:仕事を減らす勇気|フリーランスが「年収」と「自由」を同時に増やすための『選抜』技術]
Step3【分析】KPT法で「来年の戦略」に落とし込む
最後に、抽出した事実と感情を元に、右側のページで「KPT」をまとめます。
これが来年の行動指針(戦略)になります。
| 項目 | 定義 | 書き出す時の視点(問いかけ) | 具体例 |
|---|---|---|---|
| Keep (継続) | うまくいったこと 来年も続けたいこと | 「なぜうまくいったのか?」 (成功要因の分析) | ・朝の執筆ルーティン ・週次レビューの習慣 |
| Problem (課題) | うまくいかなかったこと 反省点 | 「なぜダメだったのか?」 (仕組みの欠陥を探す) | ・稼働時間が減った ・現実逃避してしまった |
| Try (挑戦) | Keepを伸ばす策 Problemの解決策 | 「明日からできる行動は?」 (具体的なアクション) | ・売上管理表を毎週見る ・営業メールを月10件送る |
1. Keep(継続すること)
今年うまくいったこと、来年も続けたい良い習慣です。
- (例)「朝の執筆ルーティン(午前中はアポを入れない)」
- (例)「週次振り返りを日曜に行う習慣」
- ポイント: 「なぜ上手くいったのか?」という成功要因も一言添えておくと、再現性が高まります。
2. Problem(課題・反省点)
うまくいかなかったこと、モヤモヤしたことです。
- (例)「稼働時間が減った(リカバリーできなかった)」
- (例)「現実逃避してTikTokを見続けてしまった」
- ポイント: 「自分がダメだ」と人格を責めないこと。「仕組みがなかった」「環境が悪かった」とシステムのエラーとして捉えてください。
3. Try(挑戦すること)
ここが一番大事です。Keepを伸ばし、Problemを解決するための「具体的なアクション」です。
- (例)「売上管理表を毎週見る(危機感を可視化する)」
- (例)「新しいジャンルの営業メールを月10件送る」
- ポイント: 「頑張る」などの精神論ではなく、「明日からできる行動」に落とし込んでください。
これで、1年間の総決算は完了です。ノートには、あなたの1年間の「戦いの記録」と、来年勝つための「攻略本」が出来上がっているはずです。
年末の振り返りに関するよくある質問(FAQ)
- 振り返ったら「何もできていない」と落ち込みそうです。
-
それはハードルが高すぎます。「生きていた」「仕事を納めた」だけで100点です。
減点法(あれもできなかった)ではなく、加点法(これはできた)で見てください。どんなに小さなことでも、できたことを認めるのが振り返りの目的です。 - 12月中に時間が取れません。年明けでもいいですか?
-
もちろんOKですが、できれば「仕事始めの前」までにやってください。
区切りをつけることで、「フレッシュスタート効果(心理的なリセット)」が得られます。お正月休みの最後の日、カフェでゆっくりやるのもおすすめです。
まとめ:過去を肯定し、未来にワクワクしよう
振り返りは、過去の自分への「労い」であり、未来の自分への「バトンパス」です。
良いことも悪いも、全ては来年のための貴重な「データ」です。
そのデータを無駄にせず、来年の糧にできるのは、世界でたった一人、あなただけです。
お気に入りの温かいコーヒーでも飲みながら、ゆったりとした気持ちでノートを開いてみてください。そこから、あなたの「最高の1年」が始まります。

