「なぜか、いつも仕事が締め切りギリギリになってしまう…」
「時間をかけた割に、思ったほど成果が出ない…」
そんな悩みを抱えていませんか?その原因は、あなたの能力や努力不足ではなく、「パーキンソンの法則」という強力な心理法則のせいかもしれません。
この記事では、この法則の正体をどこよりも分かりやすく解説し、僕自身が完璧主義の沼から抜け出すきっかけとなった具体的な5つの対策を、実体験を交えて紹介します。
まずは結論:あなたの仕事が膨張する「パーキンソンの法則」とは?
パーキンソンの法則について詳しく解説する前に、まずはこの法則が僕たちの日常にどれほど深く根付いているかを知っていただくための導入部です。
この法則は、単なるビジネス用語ではなく、多くの人が無意識のうちに経験している「時間とリソースの罠」なんです。
ここでは、この法則の核心である第一法則と、見過ごされがちな第二法則について、身近にあることをベースにお伝えします。
法則の核心:仕事は「与えられた時間」を満たすまで膨張する
パーキンソンの法則の最も有名なのはこの第一法則です。
これは、「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」ということを指します。小学生の「夏休みの宿題」を思い出してみてください。
1ヶ月という長い時間があったはずなのに、なぜ多くの人が最終日に丸々1日を費やすことになるのでしょうか?
それは、私たちの脳が「締め切りまで、まだ時間がある」と認識すると、無意識のうちに作業を後回しにしたり、必要以上に細部にこだわったりして、与えられた時間をすべて使い切ろうとするからです。
1時間で終わるはずの会議が、予定時間の1時間が経過するまで結論が出ないのも、この法則の典型的な現れです。この法則を知ることは、なぜ時間に追われてしまうのか、その根本的な原因を理解するための第一歩となります。
Granted that work (and especially paper work) is thus elastic in its demands on time,
it is manifest that there need be little or no relationship between the work to be done and
the size of the staff to which it may be assigned.
引用:Parkinson’s Law|C. Northcote Parkinson
(翻訳)
「そもそも仕事(特に事務作業)というのは、使える時間に合わせて(いくらでも)膨らんでいくものです。 そう考えると、『こなすべき仕事の実際の量』と『その仕事を担当するスタッフの人数』との間に、ほとんど、あるいは全く関連性がなくても構わない、ということが明白になります。」
実はもう一つある「第二の法則」:支出は収入の額まで膨張する
パーキンソンの法則には、あまり知られていない第二法則も存在します。
それは、「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」というものです。これもまた、私たちの多くが共感できるのではないでしょうか。
「給料が上がったはずなのに、なぜか月末にはいつもお金がない」「臨時収入があったのに、気づいたら何に使ったか分からないまま消えていた」といった経験は、まさにこの第二法則が働いている証拠です。
収入が増えれば、それに合わせて生活水準を上げたり、新しい趣味にお金を使ったりと、私たちの支出は自然と収入の上限を目指して膨らんでいきます。
この法則は、仕事の時間管理だけでなく、個人の資産形成や企業の予算管理といった、あらゆるリソース管理において重要な示唆を与えてくれます。
僕自身がハマった「パーキンソンの法則」という名の沼
この法則は決して他人事ではありません。
僕自身、フリーランスのSEOコンサルタントとして、この法則の罠にどっぷりとハマっていました。
ここからは、僕が「完璧主義」という名の呪いにとらわれ、いかにして貴重な時間を浪費していたか、そのリアルな失敗談をお話しします。
「神は細部に宿る」はだめ?完璧を求めて時間を溶かした日々
かつての僕は、「神は細部に宿る」という言葉が好きでこれを意識して仕事をすることが多かったです。
クライアントに提出する資料は、1ピクセルのズレも許さない。一言一句、完璧な表現を追求する。それがプロフェッショナルな仕事だと信じて疑いませんでした。
しかし、その結果はどうだったでしょう。資料の配色やレイアウトなどの体裁を整えるだけで1時間が過ぎ、代替案を考えているうちに夜が明ける。
常に仕事に追われ、「完了」しないタスクリストを前に、無力感に苛まれる日々でした。完璧を目指すあまり、タスクは風船のように膨らんでいき、僕はその中で溺れていたのです。
そのこだわりが、クライアントの成果にどれだけ貢献していたのか?今思えば、そのほとんどは自己満足に過ぎませんでした。
発見した「まゆ毛現象」:時間をかけても成果は変わらない不都合な真実
僕の価値観を180度変えたのは、意外にも、仕事とは全く関係のない「まゆ毛の手入れ」でした。
僕には週に2回、まゆ毛とほほ毛を整えるルーティンがあります。いつもはダラダラと1時間ほどかけていましたが、ある日、「20分で終わらせる」とタイマーをセットして試してみたのです。
結果は衝撃的でした。仕上がりは、ほとんど何も変わらなかったのです。
この「時間をかけても成果は変わらない」という不都合な真実を、僕は「まゆ毛現象」と名付けました。そして気づいたのです。僕が仕事でこだわっていた細部の多くは、この「まゆ毛」と同じだったのだと。
| あなたの行動 | 投下時間 | 成果への影響 | 法則の罠 |
|---|---|---|---|
| スライドの配色調整 | 60分 | ほぼゼロ | まさにパーキンソンの法則 |
| 提案の骨子作成 | 60分 | 非常に大きい | 投資すべき時間 |
この原体験については下記の記事に詳しく書いているので、合わせて読んでみてください。

パーキンソンの法則を克服する、今日からできる5つの対策
パーキンソンの法則は強力ですが、決して抗えないものではありません。この法則のメカニズムを理解し、意識的に対策すれば、私たちは時間の主導権を取り戻すことができます。
僕自身、数々の失敗と試行錯誤を経て、この法則を乗りこなすための具体的な方法を見つけ出しました。ここからは、僕が実践し実際に効果があった「5つの対策」を紹介します。
これらは特別なツールや才能を必要とせず、今日から誰でも始められるものばかりです。あなたもこの対策を手に、仕事の膨張を止め、生産性を高めていきましょう。
対策1:仕事を「細分化」し、制限時間を設ける
「ブログ記事を1本執筆する」といった漠然とした大きなタスクは、パーキンソンの法則の格好の餌食です。終わりが見えないため、無意識に作業を広げ、時間を浪費してしまいます。
この罠を回避する最も効果的な方法が、タスクの「細分化」と「制限時間の設定」です。まず、大きなタスクを具体的な小さなステップに分解します。
例えば、「ブログ記事執筆」なら、「1. キーワード調査(30分)」「2. 構成案作成(60分)」「3. 導入部分の執筆(45分)」「4. 各見出しの執筆(各30分)」「5. 全体の推敲と校正(45分)」といった具合です。
このようにタスクを分解することで、一つひとつの作業のゴールが明確になり、着手しやすくなります。そして、ここからが重要なのですが、分解した各タスクに「意図的に短い」制限時間を設けるのです。
これは「ポモドーロ・テクニック」の考え方に近いかもしれません。例えば「構成案作成」に60分と設定したら、タイマーをセットし、その時間内に必ず終わらせる、と自分にプレッシャーをかけるのです。
時間が来たらいったん手を止め、完成度が8割でも次に進む勇気を持つことが大切です。この「制約」が、不要なこだわりや脇道に逸れることを防ぎ、集中力を最大限に引き出してくれます。
最初は窮屈に感じるかもしれませんが、繰り返すうちに、短い時間で質の高いアウトプットを出す感覚が身についてくるはずです。

対策2:「完了の定義」を明確にし、完璧主義から脱却する
僕がパーキンソンの法則の沼にハマった最大の原因は、「完璧主義」でした。
「神は細部に宿る」という言葉を信じ、常に120%のアウトプットを目指していました。しかし、この思考こそが、仕事の終わりを無限に先延ばしにする癖だったのです。
この癖を治すには、作業を始める前に「完了の定義(Definition of Done)」を明確にすることです。
例えば、「クライアントへの提案資料作成」というタスクであれば、「目的が達成できる最低限の要素は何か?」を自問します。「課題背景、提案内容、概算費用、スケジュール案が含まれていて、デザインの体裁が整っていれば完了とする」といったように、具体的な完了条件を設定するのです。
この定義には、「やらないこと」を含めるのも有効です。「今回は詳細な競合比較は含めない」「デザインの作り込みは次のフェーズで行う」など、スコープを意図的に限定することで、作業の膨張を防ぎます。
この「完了の定義」は、いわば航海の目的地です。目的地が定まっていれば、嵐に遭遇しても(予期せぬ問題が発生しても)、羅針盤を見失うことなく、最短ルートで進むことができます。
完璧を目指さない勇気、80%で「完了」と見なす潔さが、結果的にあなたを前に進ませ、より多くの成果を生み出す原動力となるのです。
対策3:「ハコ」を用意し、思考と作業を分離する
仕事中、次から次へと思考が湧き出て、目の前の作業に集中できないことはありませんか?
「あの件、クライアントに連絡しないと」
「ブログの新しいネタ、忘れないようにしないと」
といった雑念は、集中力を奪い、作業時間を不必要に引き延ばす大きな要因です。
これに対処するため、僕は「ハコ」を用意するという手法を実践しています。「ハコ」とは、思考やアイデア、タスクなどを一時的に放り込んでおく場所のことです。僕の場合は、テキストエディタ(Obsidian)のデイリーノートがその役割を担っています。
作業中に何か雑念が浮かんだら、それをすぐにデイリーノートに書き出すのです。「【TODO】〇〇さんに連絡」「【アイデア】パーキンソンの法則の記事で、自分の失敗談を入れる」のように、頭に浮かんだことを瞬時に言語化して「ハコ」に移す。
この行為の重要な点は、頭の中からその雑念を「追い出す」ことで、再び目の前のタスクに集中できる状態を取り戻せることです。
「後でちゃんと見る場所がある」という安心感が、雑念への執着を断ち切ってくれます。思考と作業を明確に分離することで、シングルタスクに集中できる環境を意図的に作り出す。このシンプルな習慣が、マルチタスクによる非効率を防ぎ、パーキンソンの法則が入り込む隙を与えません。
対策4:朝イチで「最も重要なタスク」に取り組む
1日の始まりは、最も集中力と意志力が高いゴールデンタイムです。しかし、多くの人はこの貴重な時間を、メールチェックやSNSの確認といった、緊急度は高いが重要度は低いタスクに費やしてしまいがちです。
その結果、いざ重要な仕事に取り掛かろうとする頃には、すでに心身が消耗し、パーキンソンの法則の影響を受けやすい状態になっています。
この悪循環を断ち切るのが、「Eat That Frog(そのカエルを食べてしまえ)」、つまり「朝イチで最も重要で厄介なタスクに取り組む」というアプローチです。
僕の場合、SEOコンサルタントとして、クライアントのサイト分析や戦略立案といった、最も思考力を要するタスクを午前中の最初に持ってくるようにしています。
朝は電話やチャットの連絡も少なく、邪魔が入りにくい絶好の環境です。この時間帯に最も重要なタスクを片付けてしまえば、「今日も一番大事な仕事は終わった」という大きな達成感と精神的な余裕が生まれます。
この余裕が、その日一日のパフォーマンスを向上させ、午後の細々としたタスクも効率的にこなすことにつながります。1日の主導権を握るために、まずは朝の過ごし方から見直してみてください。カエルを食べる勇気が、あなたをパーキンソンの法則から解放してくれるでしょう。
対策5:「やらないこと」を決め、意図的に空白を作る
パーキンソンの法則は、時間が「あればあるだけ」仕事が膨張するという法則です。であるならば、逆説的ですが、意図的に「時間を作らない」こと、つまりスケジュールに「空白」を作ることが有効な対策となります。
多くの人は、生産性を高めようとして、スケジュールをタスクで埋め尽くしてしまいがちです。しかし、これは予期せぬ差し込みタスクやトラブルに対応する余裕をなくし、結果的にすべてのタスクが遅延する原因となります。
重要なのは、「やること」を決めるのと同じくらい、「やらないこと」を明確にすることです。僕が実践しているのは、週の初めに「今週やらないことリスト」を作ることです。
「新しいツールの調査はしない」「重要度の低い定例会議には参加しない」など、具体的な項目をリストアップします。これにより、時間とエネルギーを最も重要なことに集中させることができます。
また、1日のスケジュールの中に、あえて何も予定を入れない「空白の時間」を設けることも意識しています。例えば、午後に1時間のバッファを確保しておく。この時間は、急なタスクに対応したり、疲労回復に充てたり、あるいは純粋に思考を巡らせる時間に使うこともできます。
この「空白」が精神的なゆとりを生み、仕事の膨張に対する強力な防波堤となるのです。すべてをコントロールしようとするのではなく、意図的な「余白」を持つことが、結果的に質の高い仕事と健全なワークライフバランスにつながります。
パーキンソンの法則に関するよくあるQ&A
ここまでパーキンソンの法則の正体と、その対策について詳しく解説してきました。
しかし、実践しようとすると、いくつかの疑問が浮かんでくるかもしれません。
ここでは、多くの人が抱きがちな疑問について、Q&A形式でさらに深掘りしていきます。あなたの「あと少しの疑問」を解消し、明日からの行動を後押しするためのヒントがここにあります。
Q1. 締め切りを短くすると、仕事の質が下がりませんか?
これは最もな懸念であり、多くの人が陥る思考の罠でもあります。「時間をかける=質が上がる」という考えは、パーキンソンの法則そのものに他なりません。
重要なのは、やみくもに時間を短縮することではなく、「最適な時間」を見つけることです。僕が発見した「まゆ毛現象」のように、一定の時間を超えると、それ以上かけても成果(質)はほとんど向上しない「収穫逓減点」が存在します。
対策として紹介した「完了の定義を明確にする」ことが、この問いの答えになります。つまり、タスクの「核となる価値」は何かを見極め、そこを満たすために必要な時間を設定するのです。
例えば、資料作成において「メッセージが明確に伝わること」が核なら、アニメーションや過度な装飾に時間をかける必要はありません。
意図的な時間的制約は、私たちに「何が本当に重要か?」を問いかけ、本質的な部分に集中させてくれる効果があります。最初は質の低下を恐れるかもしれませんが、まずは一度、意図的に短い時間で試してみてください。きっと、これまで不要な部分に多くの時間を費やしていたことに気づくはずです。
Q2. 創造的な仕事(クリエイティブワーク)にも、この法則は当てはまりますか?
「創造的なアイデアは、時間的なプレッシャーがない状態でのびのびと生まれる」と考えがちですが、実はクリエイティブな仕事にこそ、パーキンソンの法則は色濃く影響します。
終わりがない自由な時間は、時に「無限の修正地獄」を招きます。デザイナーがロゴの色を永遠に微調整したり、ライターが完璧な一文を求めて何時間も筆を進められなかったりするのは、まさにその典型です。
制約は、創造性の敵ではなく、むしろ「触媒」となり得ます。例えば、「30分でブログのアイデアを10個出す」「1時間でキャッチコピーのA/B案を必ず作る」といった時間的制約は、完璧主義のブレーキを外し、思考を強制的に前進させます。
「制約があるからこそ、普段は思いつかないような斬新なアイデアが生まれる」という現象は、多くのクリエイターが経験するところです。
創造的な仕事においても、まずは時間を区切って「たたき台」を強制的に作り出すこと。そして、その後にじっくりと質を高める時間を設ける、といったように、フェーズを分けて時間管理をすることが、結果的に質の高いアウトプットにつながります。
まとめ:パーキンソンの法則を「敵」から「味方」へ
この記事では、私たちの時間とリソースを静かに蝕む「パーキンソンの法則」について、そのメカニズムから僕自身の実体験、そして具体的な5つの対策までを詳しく解説してきました。
仕事は与えられた時間まで膨張し、支出は収入の額まで膨張する。
この法則は、単なる時間管理のTipsではなく、私たちの心理的な傾向を鋭く突いた、普遍的な真理です。重要なのは、この法則の存在を知り、「これは自分の意志の弱さのせいではない」と理解すること。そして、その上で意識的に対策を講じることです。
紹介した5つの対策は、そのための強力な武器となります。
- 仕事を「細分化」し、制限時間を設ける
- 「完了の定義」を明確にし、完璧主義から脱却する
- 「ハコ」を用意し、思考と作業を分離する
- 朝イチで「最も重要なタスク」に取り組む
- 「やらないこと」を決め、意図的に空白を作る
パーキンソンの法則を正しく理解すれば、それはもはやあなたを縛る「敵」ではありません。むしろ、意図的な制約を設けることで集中力を最大限に引き出し、最短時間で最高のアウトプットを出すための「味方」にさえなり得ます。
この記事が、あなたが時間の主導権を取り戻し、仕事と人生をより豊かにするための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。

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