「やることはわかっているのに、手が動かない」
「何から始めればいいかわからない」
そんな経験はないでしょうか。
僕はフリーランスになって5年になりますが、大きなタスクを前にすると、今でも手が止まることがあります。特に「提案書を作る」「レポートを書く」のような、漠然としたタスクは着手までに時間がかかります。
でも、仕事が速い人を観察していると、ある共通点に気づきました。
彼らはタスクを「すぐ動ける」サイズまで分解してから着手している。
この記事では、タスク分解の考え方と、具体的な分解の手順、適切な粒度の目安を解説します。AIを活用した分解のコツも紹介するので、ぜひ最後まで読んでみてください。
なぜ大きなタスクは「着手できない」のか?
タスク分解の方法を解説する前に、まず「なぜ大きなタスクは着手できないのか」を理解しておきましょう。
原因がわかれば、対策も立てやすくなります。
脳は「曖昧さ」を避けようとする
「資料を作る」「レポートを書く」のような抽象的なタスクは、何をすればいいかが不明確です。
実は、人間の脳は不確実性を避ける傾向があります。具体的な行動が見えないと、脳は「これ、本当にできるのかな?」と不安を感じ、着手をためらってしまいます。
これは心理学で「計画錯誤」と呼ばれる現象に関連しています。人は「うまくいけばこのくらいで終わる」という楽観的な見積もりをしがちで、実際に着手すると「思ったより大変だ」と感じることが多いのです。
ノーベル賞経済学賞受賞の認知心理学者ダニエル・カーネマンは、楽観バイアスがかかる現象を「計画錯誤」という言葉で表現しています。
計画錯誤とは、「時間や予算など計画完遂に必要な資源を常に過小評価し、遂行の容易さを過大評価する傾向」で、人間の思考の非合理性ゆえに生じてしまう予測エラーのことです。
だから、大きなタスクを前にして手が止まるのは、意志が弱いからではありません。人間の脳の仕組みとして、当然の反応なのです。
「全体像」が見えないと先延ばしになる
タスクが大きいと、終わりが見えません。
「これ、いつ終わるんだろう」という不安が、着手を妨げます。終わりが見えないから、「今日はいいか」「明日やろう」と先延ばしにしてしまうのです。
実は、先延ばし癖の正体は、タスクの「見通しの悪さ」にあることが多いです。
タスクを分解して「これなら30分で終わる」と見通しが立てば、着手のハードルは一気に下がります。先延ばし癖に悩んでいる人は、タスク分解を習慣にするだけで大きく改善する可能性があります。
先延ばし癖の根本原因と対策を詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてみてください。

タスク分解とは?「すぐ動ける」サイズに切り分ける技術
タスク分解とは、大きなタスクを、すぐに着手できる小さな作業に分割することです。
たとえば、「記事を書く」というタスクは漠然としています。でも、こう分解するとどうでしょうか。
- 構成を作る
- 導入文を書く
- 本文を書く
- まとめを書く
- 推敲する
こうすると、「次に何をするか」が明確になります。「まずは構成を作ろう」と、すぐに着手できます。
タスク分解の本質は、「次の一歩」を明確にすることです。大きなタスクを前にして「何から始めればいいかわからない」という状態を、「まずこれをやればいい」という状態に変えます。
それだけで、着手のハードルは劇的に下がります。
タスク分解の4つの効果
タスク分解には、大きく4つの効果があります。
① 着手スピードが上がる
タスクを分解すると、「すぐできる」と思えるから、すぐ動けます。
大きなタスクは「どこから手をつけるか」で迷います。でも、30分で終わるサイズに分解すれば、迷う余地がなくなります。
「記事を書く(3時間)」だと重く感じますが、「構成を作る(30分)」なら「まあ、やるか」と思えます。この心理的ハードルの差が、着手スピードに大きく影響します。
② 時間見積もりの精度が上がる
小さいタスクほど、所要時間が読みやすいです。
「記事を書く(3時間)」という見積もりは、かなり不確実です。途中で調べ物が必要になるかもしれないし、書いてみたら思ったより長くなるかもしれません。
でも、「構成を作る(30分)」「導入文を書く(20分)」のように分解すれば、見積もりの精度は格段に上がります。
時間見積もりの精度が上がれば、1日の計画も立てやすくなります。「今日はここまで終わらせる」という見通しが立つから、安心して作業を進められます。

③ 進捗が可視化される
小さな完了を積み重ねることで、達成感が得られます。
「記事を書く」という1つのタスクだと、完了するまで達成感がありません。でも、7つのサブタスクに分解すれば、1つ終わるごとに「1つ終わった」という実感があります。
「今日は3つ終わった」という達成感は、モチベーションにつながります。逆に、大きなタスクを抱えたまま「まだ終わらない」と思い続けるのは、精神的にもつらいです。
タスク分解は、仕事のモチベーションを維持する仕組みでもあります。
④ AIに任せるときの精度が上がる
これは最近の話ですが、分解されたタスクは、AIに渡したときのアウトプット精度が上がります。
たとえば、ChatGPTやGemini、Cursorに「いい感じの提案書を作って」と依頼しても、たいていの場合は微妙なアウトプットが返ってきます。
でも、「競合3社の特徴を表にまとめて」「導入文を300字で書いて」のように具体的に依頼すると、精度がグッと上がります。
これは考えてみれば当然で、AIも「何をすればいいか」が明確でないと、的を射た回答ができません。人間と同じです。
AIに渡す前に「自分が着手できるサイズ」に分解しておく。 これがAI時代の仕事術だと思っています。
適切な粒度は?「30分〜1時間」ルール
タスク分解をするとき、「どこまで細かく分解すればいいか」で迷う人は多いです。
結論から言うと、1タスク=30分〜1時間が目安です。
タスクの粒度の目安
タスクの粒度には、ちょうどいい範囲があります。
- 15分未満:細かすぎます。管理コストが増えて、かえって非効率です。
- 30分〜1時間:ちょうどいいです。すぐ着手できて、見積もりも立てやすいです。
- 2時間以上:大きすぎます。不確実性が高くなり、見積もりが外れやすいです。
僕は「30分」を基準にしています。
理由は、ポモドーロ・テクニック(25分集中+5分休憩)を実践しているからです。1ポモ=25分なので、30分のタスクなら「1ポモで終わる」とイメージしやすいんですよね。
タスクの粒度とポモドーロのサイズが合っていると、見積もりも進捗管理もラクになります。ポモドーロを使っている人は、30分を目安にするのがおすすめです。

「すぐ着手できるか?」で判断する
粒度に迷ったら、こう自問してみてください。
「このタスク、今すぐ着手できるか?」
分解したタスクを見て、「これならすぐできる」と思えるならOK。「うーん、まだ重いな」と感じるなら、もう一段階分解しましょう。
逆に、分解しすぎて「作業のための作業」が増えてきたら、まとめます。
たとえば、「メールを開く」「件名を書く」「本文を書く」「送信ボタンを押す」まで分解するのはやりすぎです。「〇〇さんにメールを送る(10分)」くらいでちょうどいいです。
「すぐ着手できるか?」を基準にすれば、自然と適切な粒度になります。
僕が実践する「動詞で終わる」ルール
タスクを書くときは、「〜する」という動詞で終わる形にするのがおすすめです。
- ❌ NG:「資料作成」(何をするか不明)
- ⭕ OK:「資料の構成を3見出しで作る」「導入文を300字で書く」
名詞で終わるタスクは、何をすればいいかが曖昧になりやすいです。「資料作成」と書いても、「作成って具体的に何?」となります。
動詞で終わる形にすると、具体的な行動がイメージできます。「構成を作る」なら、「まずWordを開いて、見出しを3つ書けばいいんだな」とわかります。
この小さな工夫だけで、着手のハードルはかなり下がります。
実践編|タスク分解の3ステップ(AI活用あり)
ここからは、具体的なタスク分解の手順を解説します。
僕が普段やっている方法を、3つのステップに分けて紹介しますね。AIを活用するコツも一緒に説明します。
STEP1:ゴールを明確にする
まず最初にやるべきは、ゴールの明確化です。
「このタスクが終わったとき、何ができていればOKか?」を言語化します。
たとえば、「提案書を作る」というタスクなら、ゴールは「クライアントに提出できる状態の提案書」かもしれません。あるいは「上司に見せて方向性を確認できる状態」かもしれません。
ゴールが曖昧だと、分解のしようがありません。
「いい提案書を作る」ではダメです。「何をもって”いい”とするのか」がわからないからです。
ゴールを明確にするときは、できるだけ具体的な状態で書きましょう。「〇〇ができている状態」「△△が完了している状態」という形式がおすすめです。
AI活用のコツ
ゴールが言語化できないときは、AIに壁打ちしてもらうのも有効です。たとえば、ChatGPTにこう聞いてみます。
「〇〇の提案書を作りたいんだけど、どんな状態になっていればOKだと思う?」
AIとの対話でゴールが明確になることがあります。自分一人で考えていると堂々巡りになりがちですが、AIに聞くと「あ、そういう観点もあるな」と気づくことが多いです。
STEP2:必要な作業を洗い出す
ゴールが明確になったら、次は必要な作業の洗い出しです。
ゴールに到達するために必要な作業を、すべて書き出します。この段階では順番は気にせず、思いつくままに列挙すればOKです。
たとえば、「提案書を作る」なら、
- 競合の情報を調べる
- クライアントの課題を整理する
- 提案の骨子を決める
- 各ページの内容を書く
- デザインを整える
- 上司に確認してもらう
「足りない情報」「確認が必要なこと」もここで洗い出しておきましょう。「〇〇のデータが必要」「△△さんに確認しないといけない」などです。
AI活用のコツ
初めてやるタスクや大きめのタスクは、AIに洗い出しを依頼するのが効率的です。
たとえば、こう聞きます。
「〇〇を作るために必要な作業を洗い出して」
AIが出してくれたリストを「参考にする」でもいいし、「そのまま活用する」でもOKです。
自分で考えるより圧倒的に速く、抜け漏れも減ります。ChatGPT、Gemini、Cursorなど、どのAIでもOKです。
僕は初めてやるタスクのときは、まずAIに洗い出しをお願いして、そのリストをベースに自分なりに調整しています。ゼロから考えるより、ずっとラクです。
STEP3:順番を決めて、時間を見積もる
洗い出した作業を、実行する順番に並べ替えます。
このとき意識するのは、依存関係です。「Aが終わらないとBに着手できない」というものがあれば、Aを先にやります。
たとえば、「競合の情報を調べる」が終わらないと、「提案の骨子を決める」には着手しづらいです。だから、競合調査を先にやります。
順番が決まったら、各作業の所要時間を見積もります。
- 競合の情報を調べる(30分)
- クライアントの課題を整理する(20分)
- 提案の骨子を決める(30分)
- …
見積もったら、カレンダーに落とし込みましょう。「今日の14:00-14:30は競合調査」「14:30-15:00は課題整理」という形で、具体的な時間を決めます。
時間を決めないと、「いつかやる」になってしまいます。 分解しただけで満足せず、必ずカレンダーに入れましょう。
AI活用のコツ
依存関係が複雑なときは、AIに整理してもらうのも有効です。
「この作業リストを、依存関係を考慮して順番に並べて」
ただし、時間見積もりは自分の過去実績を参考にする方が精度が高いです。AIは「一般的にこのくらいかかる」という情報は持っていますが、「あなたがこのタスクにどのくらいかかるか」はわかりません。
時間見積もりは、自分の記録をベースにするのがおすすめです。
分解したタスクの時間見積もりを精度高くする方法は、下記の記事で詳しく解説しています。

具体例|僕が「記事制作」をどう分解しているか
ここまで理論的な話が続いたので、具体例を紹介しますね。
僕が実際にやっている「記事制作」と「クライアントワーク」のタスク分解例です。
「記事を書く」のタスク分解例
「記事を書く」というタスクは、漠然としていて着手しづらいです。
❌ 分解前: 「記事を書く(3時間)」
こう書いてあると、「うーん、3時間か…」と重く感じてしまいます。どこから手をつければいいかもわかりません。
⭕ 分解後:
| No. | タスク | 時間 |
|---|---|---|
| ① | 構成を作る | 30分 |
| ② | 導入文を書く | 20分 |
| ③ | H2-1の本文を書く | 30分 |
| ④ | H2-2の本文を書く | 30分 |
| ⑤ | H2-3の本文を書く | 30分 |
| ⑥ | まとめを書く | 15分 |
| ⑦ | 推敲する | 25分 |
こう分解すると、「まずは①の構成だけやろう」と着手しやすくなります。
「今日は①②だけやる」という判断もできます。3時間まとめて取れなくても、30分のスキマ時間で1つずつ進められます。
「クライアントワーク」のタスク分解例
クライアントへのレポート作成も、分解すると見通しが立ちます。
❌ 分解前: 「A社のレポート作成(2時間)」
⭕ 分解後:
| No. | タスク | 時間 |
|---|---|---|
| ① | 前月のデータをスプレッドシートに出力する | 10分 |
| ② | 主要KPIの前月比を計算する | 20分 |
| ③ | 順位変動があったページを3つピックアップする | 15分 |
| ④ | 変動理由の仮説を書く | 30分 |
| ⑤ | 来月のアクションを3つ決める | 20分 |
| ⑥ | レポートの体裁を整える | 15分 |
分解すると、「③までは今日中に終わらせる」という区切りができます。
「2時間まとめて取れないから今日はやめよう」ではなく、「45分あるから③までやろう」と判断できます。これが、タスク分解の実用的なメリットです。
分解しても手が止まるときの対処法
タスクを分解しても、なぜか手が止まることがあります。
そんなときの対処法を2つ紹介しますね。
「最初の5分」だけやると決める
分解しても着手できないときは、「とりあえず5分だけ」やると決めましょう。
人間の脳には「作業興奮」という仕組みがあります。手を動かし始めると、やる気が出てくるという現象です。
「5分だけ」と思って始めると、意外とそのまま続けられることが多いです。5分経ったら「続けるかやめるか」を選び直せばOKです。
「5分だけやる」と決めることで、着手のハードルが一気に下がります。
「次にやること」を具体的に書き残す
作業を中断するとき、「次に何をするか」をメモしておきましょう。
これをやっておくと、再開時に「何から始めるか」で迷わなくなります。
僕はObsidianのデイリーノートに、翌日の「最初にやること」を書いています。「明日はまず〇〇から始める」と決めておくと、朝の着手がスムーズになります。
再開時の迷いをなくすだけで、作業効率は大きく変わります。
「25分だけ集中する」ポモドーロ・テクニックと組み合わせると、着手のハードルがさらに下がります。興味のある方は、下記の記事も参考にしてみてください。

タスク分解についてよくある質問(FAQ)
まとめ
タスク分解は、難しいことを簡単にする技術ではありません。「すぐ動ける」状態を作り、着手のハードルを下げる技術です。
この記事で紹介した内容をまとめると:
- 大きなタスクに着手できないのは、脳の仕組み。意志が弱いわけではありません。
- タスク分解には4つの効果があります(着手スピード、見積もり精度、進捗可視化、AI精度向上)。
- 適切な粒度は30分〜1時間。「すぐ着手できるか?」で判断しましょう。
- 3ステップで分解する:ゴール明確化→洗い出し→順番・時間見積もり。
- AIを活用すると、洗い出しが圧倒的に速くなります。
30分〜1時間単位に分解し、動詞で書く。それだけで仕事のスピードは変わります。
「分解しても完璧を求めてしまう」という人は、完璧主義との向き合い方もセットで学ぶと効果的です。

タスク分解は「スキル」です。最初は時間がかかっても、続けるうちに自然とできるようになります。
まずは今日、1つのタスクを分解してみてください。きっと「これならすぐできる」と思えるはずです。
